BREEZIN'(ブリージン) | ジョージ・ベンソン

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BREEZIN'ジャケット今回ご紹介する名盤は1976年にリリースされたジョージ・ベンソンの「BREEZIN'」です。

ジョージ・ベンソンという人は驚くことに3歳の頃からプロのギタリストを目指していたということなのですが、3歳の時分に将来の自分の姿なんて普通は考えられないですよね。親からみても自分の子どもの3歳の頃なんて、この子は将来どうなるやらなんて感じで子どもの将来なんて皆目見当が付かないのが正直なところであります。それにしてもジョージ・ベンソンが3歳の頃に子ども用のギターなるものなんてあったのでしょうか。それにしても幼少の頃からの志には驚いてしまいます。

ジョージ・ベンソンは1960年代までは、ウェス・モンゴメリーばりのジャズ・ギタリストだったのですが、1970年代からフュージョン系にアーティストに転身、そのフュージョン系の時代を代表する作品が本作「BREEZIN'」なのであります。本作「BREEZIN'」はなんと驚くことにビルボード・チャートのPOP、R&B、ジャズの各部門で同時1位に輝くという偉業を成し遂げるほか、グラミー賞においてもシングル・カットされた「THIS MASQUERADE(マスカレード)」はレコード・オブ・ザ・イヤーを、アルバムがベスト・ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンスを受賞するなど、1970年代のフュージョン・シーンを代表する名盤中の名盤なのです。

1曲目の表題曲「BREEZIN'」はそのタイトルの通り夏空にそよ風に吹かれるような爽やかさが滲み出ている曲です。テレビのBGMなどにも使われていたりすることもあるので、ご存知の方も多いかもしれません。2曲目はカーペンターズもカヴァーしたレオン・ラッセルの名曲「THIS MASQUERADE(マスカレード)」をカヴァーしたものです。ギターだけではなく見事な歌声も披露、特にギターとユニゾンで繰り出されるスキャットはギタリストのノーマン・ブラウンやベーシストのネーザン・イーストにも影響を与えています。3曲目の「SIX TO FOUR」はタイトルもそこから付けられていると思うのですが6拍子という変拍子の楽曲を違和感なく聴かせてくれます。

LPではB面1曲目に当たる4曲目の「AFFIRMATION(私の主張)」は非常にキャッチーなテーマが印象深い、これぞフュージョンというナンバーです。バックのストリングスが軽快さ醸し出しておりますが、この曲のギター・ソロはすさまじい物があります。5曲目「SO THIS IS LOVE?(これが愛なの?)」はバックのストリングスが裏メロ的な効果を出しているのですが、4曲目の「AFFIRMATION(私の主張)」とはまた違う趣で多少緊張感のある楽曲に仕上げられています。6曲目「LADY(愛するレディ)」は非常に落ち着いたナンバーながらも、広大さを感じる耳に馴染みやすい楽曲となっております。

その昔、父親がジョージ・ベンソンのアルバム(LP)を持っていて、「これちょうだい」とお願いしてみたところあっさりと「いいよ」という返事が返ってきたので、その時はあーきっと何かの手違いでコレクションに入っていたのだろうと思ったりしたものです。なんとジャズ期のジョージ・ベンソンの作品で、父親がジャズを聴いている姿など見たこともないので、きっとその推理は間違いでなかった思われます。

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JACO PASTOIUS(ジャコ・パストリアスの肖像) | ジャコ・パストリアス

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JACO PASTOIUS(ジャコ・パストリアスの肖像)ジャケット今回ご紹介する名盤は1976年にリリースされたジャコ・パストリアスの「JACO PASTOIUS(ジャコ・パストリアスの肖像)」です。

本作「JACO PASTOIUS(ジャコ・パストリアスの肖像)」はジャコ・パストリアス初のリーダーアルバムであり、ジャコ・パストリアスのデビュー作となります。本来、リズム楽器として位置づけられているエレクトリック・ベースをソロ楽器としての様々な可能性を提示していることから、世のベーシストの度肝を抜いた作品として今でもジャズ・フュージョン界において名盤として語られるアルバムであります。度肝を抜かれたのはアマチュアのベーシストにとどまらず、あのマーカス・ミラーもこのアルバムには衝撃を受けたようで、「ひたすらジャコを研究した」と言わしめるエレクトリック・ベースのバイブル的作品なのであります。

1曲目の「DONNA LEE」はチャーリー・パーカーのビバップ曲なのですが、これをジャコ・パストリアスはパーカッションとのデュオにアレンジ、そしてそこで披露される驚異的な速弾きはまさに神業というほかありません。またジャコ・パストリアスの特色でもあるハーモニクスが非常に効果的なのです。しかも究極のベース・プレイでありながらフィンガリング・ノイズがなく、フレットレス・ベースから奏でられるそのサウンドは、速弾きながら流れるようであり、名刺代わりにしては凄まじすぎる楽曲に仕上がっています。

2曲目の「COME ON,COME OVER」はサム&デイヴをフィーチャーしたファンクなヴォーカル・ナンバーであります。ベースがリズム楽器に徹している感のある楽曲というかジャコ・パストリアスのプレイはリズミカルすぎます。ジャコ・パストリアスのリフによるAメロとリズミカルなベースが光るサビのメリハリがたまりません。続く3曲目の「CONTINUUM」はジャコ・パストリアスらしいメロウなナンバーです。フレットレス・ベースから奏でられる美しいベースのメロディはジャコ・パストリアスの真骨頂といったところです。4曲目の「KURU/SPEAK LIKE A CHILD」は、ハービー・ハンコックの名曲「SPEAK LIKE A CHILD」とジャコ・パストリアスの「KURU」が合体した作品となっております。

冒頭の4曲だけ紹介しましたが、このアルバムもジャズ・フュージョン界の名盤らしく錚々たるメンバーが参加しています。トランペットにランディ・ブレッカー、テナー・サックスにマイケル・ブレッカー、アルト・サックスにデイヴィッド・サンボーン、フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノにハービー・ハンコック、ドラムスにレニー・ホワイト、ソプラノ・サックスにウェイン・ショーター、パーカッションにドン・アライアスなどもうフュージョン・ファンならよだれもののメンバーが集結しております。

本作は、ジャコ・パストリアスのプレイももちろん堪能できるのですが、コンポーザーとしてのジャコ・パストリアスの魅力もたっぷり詰まっております。1曲目の「DONNA LEE」はカヴァー曲ですが、それ以外はジャコ・パストリアスの手になる楽曲で占められています。ウェザー・リポートの「HEAVY WEATHER」でも触れましたが、この才能が若くして失われてしまったことは本当に残念でたまりません。

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WALTZ FOR DEBBY(ワルツ・フォー・デビイ) | ビル・エヴァンス

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WALTZ FOR DEBBYジャケット今回ご紹介する名盤は1961年にリリースされたビル・エヴァンスの「WALTZ FOR DEBBY」です。

「WALTZ FOR DEBBY」はライブハウスの「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライヴの模様を収録したライヴ音源なのでありますが、ビル・エヴァンスの代表作であるとともに、ジャズ界屈指の名盤といわれているアルバムです。このライヴ録音が行われた11日後にビル・エヴァンス・トリオのベーシストであるスコット・ラファロが交通事故で他界し、この日の演奏のうちスコット・ラファロの・プレイが目立っているものを「SUNDAY AT THE VILLEAGE VANGUARD」という追悼盤として先行発売し、残りのテイク収録したものがこの「WALTZ FOR DEBBY」なのであります。

日頃ジャズを聴かないリスナーにとっては、ジャズというと小難しいイメージがどうしても付きまといますが、このアルバムはジャズ特にピアノ・トリオの入門盤としても最適です。歌うように奏でられるビル・エヴァンスのピアノはとても優雅で、スコット・ラファロのベースは持ち味が如何なく発揮されています。ポール・モチアンのドラムも堅実にリズムを刻み、ピアノ・トリオとはなんたるかが手に取るようにわかるそういった演奏なのであります。

ビル・エヴァンスは、クラシック・ピアノを学んだことから巧みなテクニックを手に入れます。そして元々左利きであることから、左手による伴奏部分の演奏がしっかりとしています。ピアノが伴奏の肝をになってくれることからスコット・ラファロのベースは自由に動き回ることができ、そのベースによるインプロヴィゼイションは他のピアノ・トリオにはない、音楽空間と色彩をサウンドに与えてくれます。そしてさらにビル・エヴァンスが右手で奏でる旋律がサウンドに繊細さと美しさを与えてくれています。

筆者のお気に入りの楽曲はなんといっても表題曲でもある「WALTZ FOR DEBBY」であります。クラシックに影響を受けていることを感じさせるイントロこそワルツ・タイムの3拍子で演奏されているのですが、イン・テンポに入ると4拍子による快活な演奏へと切り替わります。「DEBBY」とはビル・エヴァンスの姪の名で日本語にするとデビイに捧げるワルツといったところでしょうか、非常に愛らしい作品となっています。また1曲目の「MY FOOLISH HEART」も美しいナンバーで、同名映画の主題歌をカヴァーしたものなのですが、非常に優雅なジャズ・バラードに仕上がっています。

ビル・エヴァンスという人は、アルバム・ジャケットの印象などから知的で堅物なイメージがありますが、実は薬物の乱用などにより歯がぼろぼろになってしまい、その歯を隠すために常にジャケット写真などでは口を閉じていたようです。それでもビル・エヴァンスのピアノは後世のピアニスト達に多大なる影響を与えますが、薬物の影響か51歳という若さで人生の幕を閉じてしまいました。

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SAXOPHONE COLOSSUS(サキソフォン・コロッサス) | ソニー・ロリンズ

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SAXOPHONE COLOSSUSジャケット今回ご紹介する名盤は1956年にリリースされたソニー・ロリンズの「SAXOPHONE COLOSSUS」です。

ソニー・ロリンズといえばハード・バップの代表的なテナー・サックス奏者であり、当ブログでも紹介させていただきましたジョン・コルトレーンと並ぶジャズ・サックスの巨人としてその高い名声を得ています。ただし努力型で遅咲きであったジョン・コルトレーンとは違い、どちらかといえば天才肌のサックス奏者で10代の頃にはレコーディングを経験するなど若い時期からその活躍は始まります。またジョン・コルトレーンは常に実験的な試みで新しい分野のジャズを開拓してきましたが、ソニー・ロリンズはジャズ史における革命的な功績を残したわけではないのですが、そのメロディアスなインプロヴィゼイションが魅力的なのであります。

このアルバムが優れている点は、モダン・ジャズの様々なエッセンスを楽しむことができ、また、ソニー・ロリンズのその卓越したテクニックによるインプロヴィゼイションを余すところ無く堪能できるうえに、さらに1曲目の「ST. THOMAS」を筆頭に名曲揃いであり、それでいてジャズ初心者にも楽しめる入門的要素も含まれているところです。ジャズにそれまで興味が無かった方でも気軽に楽しめるところが本当に魅力的な、1950年代のソニー・ロリンズはおろかモダン・ジャズの最高傑作といっても過言ではないほどの作品なのであります。

1曲目の「ST. THOMAS」はソニー・ロリンズ作曲によるもので、こちらのナンバーはソニー・ロリンズの代表曲としてだけではなくジャズ界を代表する名曲であり、カリプソに影響を受けた明るい曲で、ジャズって楽しいんだなと思わず感じてしまうナンバーに仕上がっています。よくジャズのオムニバスなどにも収録されているので知っている方も意外と多いかもというナンバーです。2曲目「YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS」は一転してムーディ名ナンバーでホテルのラウンジなどのBGMにもってこいのちょっと大人の香り漂うナンバーです。3曲目の「STRODE RODE」ははとにかくソニー・ロリンズがその才能が如何なく発揮された渾身のナンバーです。

アナログ盤B面1曲目にあたる4曲目の「MORITAT」はミュージカル「三文オペラ」の挿入歌をアレンジした軽快なナンバーで、ピアノ・ソロあり、ドラムスのマックス・ローチとソニー・ロリンズのソロの掛け合いからドラム・ソロ、ベース・ソロと展開する約10分の大作となっており、各メンバーのテクニックを堪能できるナンバーです。5曲目の「BLUE 7」はやや落ち着いた雰囲気のナンバーで、こちらもソニー・ロリンズのインプロヴィゼイションが炸裂しております。こちらも10分を越える大作となっております。

なんとソニー・ロリンズは1981年にザ・ローリング・ストーンズの「TATTOO YOU(刺青の男)」に参加しているんですね。なんでもジャズ・ファンのチャーリー・ワッツが、ミック・ジャガーから「最高のサックス奏者は誰か」と聞かれソニー・ロリンズと答えたところ本当に共演が実現したようです。こういうカテゴリーという垣根を取っ払ってしまう姿勢にもソニー・ロリンズの偉大さが窺えます。

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A LOVE SUPREME(至上の愛) | ジョン・コルトレーン

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A LOVE SUPREME(至上の愛)ジャケット今回ご紹介する名盤は1965年にリリースされたジョン・コルトレーンの「A LOVE SUPREME(至上の愛)」をです。

ジョン・コルトレーンは、無名の時代が長くまた40歳という若さで他界してしまったため、第一線での活躍はわずか10年余りでありましたが、マイルス・デイヴィスと同様に常に自分の作品に満足することなく絶えず新しい試みにチャレンジし、ジャズ界のカリスマとして今なお語られています。また、天才型のソニー・ロリンズと比較されることが多いのですが、天才肌のソニー・ロリンズとは違いジョン・コルトレーンは努力型の求道者で、1955年にマイルス・デイヴィスのグループに参加しますがその演奏はあまり評価され無かったのですが、練習を重ねジャズ史に残る確固たる地位を築いていきました。

ジョン・コルトレーンが歩んできた道のりは概ね前期、中期、後期、フリー・ジャズ期の四期に分けられます。初期にはジョン・コルトレーンの代表作として1957年にリリースされた「BLUE TRAIN」があります。また、マイルス・デイヴィスのバンドやセロニアス・モンクのバンドに参加しています。中期の活動で代表的なものは、当ブログでも紹介しているマイルス・デイヴィスの「KIND OF BLUE」の収録に参加、また自身のバンドでも1960年にはこちらも名盤として名高い「GIANT STEPS」などをリリースしています。その後ハード・バップから脱却を試みるのがこの時期です。後期の代表作はなんといっても本作「A LOVE SUPREME」です。この作品によってモード・ジャズを究めたジョン・コルトレーンは1965年頃からフリー・ジャズ期を迎えます。

本作はパート1「Acknowledgement(承認)」、パート2「Resolution(決意)」、パート3「Pursuance(追求)」、パート4「Psalm(賛美)」の4部構成からなる組曲となっております。また、本作はジョン・コルトレーンいわく「神に捧げた」作品なのであり、その宗教観からきているのかその力強い演奏は圧倒的としか形容のしようのないパワフルな内容となっております。ジャズ界のコンセプト・アルバムである本作は、ジョン・コルトレーンの歴史の中でも最高傑作の呼び声高いものであり、本作でドラマーを務めているエルヴィン・ジョーンズも「ジョン・コルトレーンがどんな人物か知りたければ、A LOVE SUPREME(至上の愛)を聞けばいい」と言ったほどであります。

パート1「Acknowledgement(承認)」はテナー・サックスによるイントロの力強さにいきなり圧倒され、このアルバムの世界に引き込まれていきます。小節単位ではないその構成は、すでにフリー・ジャズへの傾倒の表われと思われます。またジョン・コルトレーンによる「A LOVE SUPREME」と連呼する調重低音なヴォーカルも印象的です。パート3「Pursuance(追求)」ではエルヴィン・ジョーンズのドラム・ソロから始まり、マッコイ・タイナーのピアノ・ソロ、ジョン・コルトレーンのインプロヴィゼイション、ジミー・ギャリソンとベース・ソロと続き、この黄金のカルテットと呼ばれた4人の感性とテクニックを満喫することができます。パート4「Psalm(賛美)」はスローなナンバーですが、こちらもパート1「Acknowledgement(承認)」と同様にフリー・ジャズへの傾倒を感じさせる楽曲に仕上がっています。

それにしてもジョン・コルトレーンはあまりにも遅咲きでした。1946年からプロとしての活動を開始したものの、1955年にマイルス・デイヴィスのグループに加入するまでまったくの無名でした。そのジョン・コルトレーンとバンドに迎え入れたマイルス・デイヴィスの先見の明にも驚かされるところであります。

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STILL LIFE (TALKING)(スティル・ライフ) | パット・メセニー・グループ

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STILL LIFE (TALKING)ジャケット今回ご紹介する名盤は1987年にリリースされたパット・メセニー・グループの「STILL LIFE (TALKING)」です。

本作はECMからゲフィンへ移籍してから、パット・メセニー・グループ名義としては初のアルバムになります。このアルバムからブラジル音楽の影響が色濃くなっており、もうなんとも聴いていて気持ちのよい作品に仕上げられております。また、本作は秀逸な楽曲で構成され、今でもライヴの定番曲を多く含んでいる重要作であり、1988年度にグラミー賞ベスト・ジャズ・フュージョン・パフォーマンス賞も受賞するなど、パット・メセニーおよびパット・メセニー・グループの中にあっても名盤の呼び声が高い1枚であります。

本作は42分強のアルバムで当時のアルバムとしてはいたって普通の長さのアルバムなのでありますが、なぜかとても短く感じてしまい、ラスト・ナンバーである「In Her Family(ファミリー)」を聴き終えた時には「あれっもうおしまい?」と感じてしまうほど、時が流れていることさえも忘れさせてくれる、そんな作品なのであります。そしてこの作品、歌詞のないヴォーカル・パートがあり、歌というよりあくまでも人間の声を1つの楽器と見立ててアレンジメントされている節があるのですが、このヴォーカル・パートがパット・メセニー・グループのひとつの特徴であり、作品全体の心地よさをさらに引き立てています。

1曲目「MINUANO(SIX EIGHT)」は9分27秒ある大作で、非常に静かなイントロダクション的部分から幕を開けます。2分47秒あたりから流れがガラッと変わり、クリア・トーンのギターがメインの爽やかなテーマを奏でます。6分24秒あたりから曲調は劇的に変化し、プログレ・ライクな壮大な展開を見せます。7分45秒あたりからまたテーマへと戻りますが、実に見事な構成力です。9分27秒という長さを感じさせない素晴らしい楽曲に仕上げられています。3曲目「LAST TRAIN HOME」もライヴでは定番の重要なナンバーであります。パット・メセニーが奏でるエレクトリック・シタールの音色がとても印象的で、またそのメロディが美しく情緒あふれるものとなっております。ドラムスはひたすらブラシで16分音符を刻み、またベースは8分音符を刻み続けることで鉄道が突き進む様子が表現されているようです。

アナログ盤ではB面に収録されていた楽曲の中からはなんといっても「THIRD WIND」です。CDでは5曲目に収録されている曲であり、こちらもライヴでの定番曲であり、8分37秒という長めのナンバーです。ラテン色が強くアップ・テンポであり、このアルバムの中では最もテクニカルな側面が強調された楽曲なのではないでしょうか。このアルバムは7曲収録されているのですが、その最後を飾るのが「IN HER FAMILY(ファミリー)」です。ピアノとギターが奏でるテーマを中心とした幻想的なバラードですが、要所でストリングスが重なり曲調を盛り上げより感動的な仕上がりとなっています。

筆者は若かりし頃にどういう訳かあまりパット・メセニーのアルバムを聴きませんでした。もちろん名前は知っていたのですが、食わず嫌いで聴かなかったのか、周りにパット・メセニーを聴いている友人もいなかったせいなのか今となってはよくわかりませんが、大人になってパット・メセニーのサウンドに触れることとなったとき、そのことで本当に損をしていたと感じたものです。

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RETURN TO FOREVER(リターン・トゥ・フォーエヴァー) | チック・コリア

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RETURN TO FOREVERジャケット今回ご紹介する名盤は1972年にリリースされたチック・コリアの「RETURN TO FOREVER」です。

本作はチック・コリア名義になっていますが実質はリターン・トゥ・フォーエヴァーというバンドのデビュー作になります。バンドのメンバーは キーボードにチック・コリア、ベースに当時スタン・ゲッツのバンドなどで活動していたスタンリー・クラーク、ソプラノ・サックスおよびフルートにジョー・ファレル、ドラムスおよびパーカッションにブラジル出身のアイアート・モレイラ、ヴォーカルおよびパーカッションにフローラ・プリムというメンバーで構成されています。このメンバーで1973年にはセカンド・アルバム「LIGHT AS A FEATHER」をリリースしています。

リターン・トゥ・フォーエヴァーというバンドは幾度かのメンバー・チェンジを経るのですが、大別して本作のメンバー構成の第1期、ジョー・ファレル、アイアート・モレイラドラムス、フローラ・プリムが脱退し、その後ドラムスにスティーヴ・ガッド、ギターにアール・クルーらが短期間で参加しましたが結局はドラムスにレニー・ホワイト、ギターにアル・ディ・メオラ、パーカッションにミンゴ・ルイスで落ち着く第2期、第3期はドラムスにジェリー・ブラウン、ヴォーカル、キーボードにチック・コリアの妻であるゲイル・モラン、第1期のメンバーであったジョー・ファレルが参加しますが1977年に解散します。1982年にアル・ディ・メオラ在籍時のメンバーにより期間限定で再結成、2011年にはギタリストにフランク・ギャンバレ、ヴァイオリニストのジャン=リュック・ポンティが参加し再々結成を果たします。

また、音楽の色合いもメンバーによって異なり本作「RETURN TO FOREVER」を発表している第1期はラテン音楽の影響が強く、ギターを加えた第2期はロック色が強くなります。第3期はよりホーン・セクションも加わりよりファンキーな方向に向かいます。本作「RETURN TO FOREVER」は比較的アコースティックな色合いが濃く、メロディアスな親しみやすい曲想で心地のよい楽園志向のフュージョン・サウンド(この時代にフュージョンと呼ばれていたかは不明)に仕上げられています。ジャズ系のアルバムとしては異例の大ヒットを記録し、1972年度スイングジャーナル誌ジャズ・ディスク大賞金賞にも選ばれました。

本作の収録曲は4曲のみなのでざっくりと全曲紹介させていただきます。1曲目で表題曲の「RETURN TO FOREVER」はインプロヴィゼイション的要素が強いながらも幻想的なアンサンブルが特徴のナンバーです。2曲目の「CRYSTAL SILENCE」はチック・コリアとジョー・ファレルのソプラノ・サックスのみのナンバーですが透明感のある美しい響きを奏でるバラードです。3曲目の「WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY」はヴォーカル・メインのボサ・ノヴァ・ナンバーでポップに仕上げられています。アナログB面にあたる4曲目の「SOMETIME AGO-LA FIESTA」は23分超の壮大な楽曲です。イントロダクション的なピアノ・ソロとベース・ソロから始まるラテン・テイストやスパニッシュ・テイストが融合された組曲となっており、15分27秒あたりで「SOMETIME AGO」から「LA FIESTA」へと楽曲が移行します。

マイルス・デイヴィスの1969年にリリースされた「IN A SILENT WAY」や1970年にリリースされた「BITCHES BREW」といった作品でキーボードを弾き、エレクトリック・ジャズの黎明期を担ったチック・コリアが出した答えは、1970年代のジャズ界におけるフュージョン現象の先駆的な作品であり、今もなお名盤としてその名を残しています。

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HEAD HUNTERS(ヘッド・ハンターズ) | ハービー・ハンコック

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HEAD HUNTERSジャケット今回ご紹介する名盤は1973年にリリースされたハービー・ハンコックの「HEAD HUNTERS」です。

本作はハービー・ハンコックのエレクトリック・ジャズ時代を代表するアルバムであり、それまでのサウンドにファンクの要素を取り入れることにより新たなるファン層を獲得し、商業的にも大きな成功を収めた作品であります。ただし、それまでハービー・ハンコックを支えてきたファン層からは、この実験的なサウンドを良しとしない方々が一部ではいたらしく賛否両論ありましたが、この作品が後のジャズ・ファンクやジャズ・フュージョンに大きな影響を与えたことは間違いはなく、歴史的にみても名盤と呼ばれるに相応しい価値のある1枚であります。

ハービー・ハンコックがジャズ・ベーシストのバスター・ウィリアムスの勧めで創価学会に入信していたのが、このアルバムがリリースされた前年の1972年です。そして、夢の中で日蓮上人に「自分の思う通りに進みなさい」とのお告げを受け、一念発起して制作されたのがこのアルバムだと思われます。本作以前から、ハービー・ハンコックはエレクトリックサウンドを取り入れ、アフリカの民族音楽、ポリリズムなどに傾倒していたのですが、前述のお告げによって何か吹っ切れたハービー・ハンコックが、以前から興味を示していたエレクトリック・ピアノやシンセサイザーを中心としたサウンドを確立したものと思われます。

フュージョン・ジャズ系のアルバムで気になるのが参加ミュージシャンなのですが、本作では、ソプラノ&テナー・サクソフォーン、サクセロ、バス・クラリネット、アルト・フルートにベニー・モウピン、エレクトリック・ベース、マリンブラにポール・ジャクソン、パーカッションにはビル・サマーズ、ドラムスにはカシオペアのプロデュースやリー・リトナーなどのL.A.フュージョンでお馴染みのハーヴィー・メイソンが名前を連ねています。特にハーヴィー・メイソンとポール・ジャクソンのリズム隊は聴きどころ満載です。

1曲目の「CHAMELEON」はシンセサイザーのリフから始まるとてもファンク・ナンバーです。本作がジャズ・ファン以外にも受けがよかったのが頷けるナンバーで、非常に聴きやすく仕上がっています。2曲目の「WATERMELON MAN」は1966年にリリースされたハービー・ハンコックの初のリーダー・アルバム「TAKIN' OFF」の代表的なブルース・ナンバーを大胆にエレクトリック・ジャズにリメイクしたものであります。3曲目は「SLY」曲調がめまぐるしく変わるナンバーですが、その都度リズム隊が、メリハリを持たせてくれる聴き応えのあるナンバーです。タイトルの「SLY」はスライ・ストーンから取っているのでしょうか。4曲目のとても落ち着きのあるスローなナンバー「VEIN MELTER」でこのアルバムは締めくくられます。

ハービー・ハンコックは1963~68年にマイルス・デイヴィス・クインテットのメンバーとして活躍しており、そのキャリアは順風満帆のように見えます。そして、マイルス・デイヴィス・クインテットを脱退後、自身のセクステットを結成します。ところが、このセクステット時代は経済的にもかなり苦境に立たされていたようです。そしてセクステットを解散させ、心機一転リリースしたアルバム「HEAD HUNTERS」が、ジャズとしては異例のヒット作となるのでした。

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HEART TO HEART(ハート・トゥ・ハート) | デイヴィッド・サンボーン

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HEART TO HEARTジャケット今回ご紹介する名盤は1978年にリリースされたデイヴィッド・サンボーンの「HEART TO HEART」です。

本作は初期の名盤として名高いアルバムであり、フュージョン系の名盤ではもはや当然の如く参加ミュージシャン顔ぶれが豪華です。ドラムスは全曲スティーヴ・ガッド、当時スティーヴ・ガッドが在籍していたスタッフからもう一人ピアノ&オルガンのリチャード・ティー、ギターのデイヴィッド・スピノザ、1曲だけですがベースのアンソニー・ジャクソンと当時若手のサックス・プレイヤーのデイヴィッド・サンボーンではありますが、錚々たるメンバーが脇を固めています。

そしてこのアルバムの特徴なのですが、プロデューサーがジョン・サイモンというお方でして、当ブログでも紹介させていただいているザ・バンドの「THE BAND」のプロデュースやその他にもジャニス・ジョプリン(ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー名義)の「CHEAP THRILL」、日本人では佐野元春の「The Barn」などをプロデュース、元々ジャズ・フュージョン系のプロデューサーではないんですね。その影響かロック、R&B、ゴスペルなどが見事なまでに融合された、ジャズ系リスナーではなくとも聴きやすい仕上がりとなっております。

デイヴィッド・サンボーンの魅力といえばなんといっても歌うように奏でるその音色にあり、そのソウルフルで「泣き」と表現される独特のサウンドはアルバム全編を通して聴くものを魅了してくれます。1曲目の「SOLO」は3分19秒という比較的短い楽曲でありますが、シンプルながらデイヴィッド・サンボーンのソロがフィーチャーされた気持ちのよい楽曲であります。2曲目「SHORT VISIT」はプロデューサー、ジョン・サイモンが書き下ろした曲を巨匠ギル・エヴァンスがアレンジ、大所帯なバンド構成でジャジーに仕上げられております。3曲目「THEME FROM "LOVE IS NOT ENOUGH"(愛のテーマ)」は小気味よいリズムが特徴のナンバーで、スティーヴ・ガッドが得意としそうなナンバーです。

LPでいうとB面に移りますがCD4曲目の「LOTUS BLOSSOM」は非常に美しいバラード・タイプの名曲であります。デイヴィッド・サンボーンのソロはもちろんのことヴィブラフォンのマイク・メイニエリ、ピアノのドン・グロルニックのソロも聴きものです。5曲目の「HEBA」はこのアルバムでは唯一デイヴィッド・サンボーンが書いた楽曲であり、ブルース色が強いアーシーな作品となっております。6曲目の「SUNRISE GOSPEL」は非常にメロウな始まりからブルージーにダイナミックさを増していく構成となっている楽曲です。ラスト・ナンバー「ANYWHERE I WANDER(果てなき旅路)」はデイヴィッド・サンボーンの「泣き」が存分に発揮されたファンにはたまらない哀愁のある楽曲となっております。

余談ではありますが、T-SQUERE(ザ・スクェア)の伊東たけしはデイヴィッド・サンボーンの影響を非常に強く受けており、確かにいわれてみれば伊東たけしが奏でるサウンドはデイヴィッド・サンボーンのそれと似た雰囲気を持っております。

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KIND OF BLUE(カインド・オブ・ブルー) | マイルス・デイヴィス

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KIND OF BLUEジャケット今回ご紹介する名盤は1959年にリリースされたマイルス・デイヴィスの「KIND OF BLUE」です。

マイルス・デイヴィスといえばモダン・ジャズの帝王を呼ばれ、ジャズ界を代表するトランペッターであり、クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、エレクトリック・ジャズ、フュージョンなど、時代の変遷に応じて様々な音楽性を見せ、ジャズ界を牽引してきました。白人のジャズと思われがちなクール・ジャズの創始者といわれ、1970年にリリースされたアルバム「BITCHES BREW(ビッチェズ・ブリュー)」では「フュージョン」と呼ばれるジャンルを確立したとされる、常に革命的な姿勢を持ったミュージシャンなのであります。

本作「KIND OF BLUE(カインド・オブ・ブルー)」も例外ではなく、モダン・ジャズのサブ・ジャンルであるモード・ジャズを完成させた歴史的価値の高い名盤でもあり、発表後半世紀近くを経ながらミリオン・セラーを達成、ジャズ・アルバムとしては異例のセールス記録を伸ばし続けています。それまでのモダン・ジャズは、コード進行の複雑化、コードの細分化に伴ってインプロヴィゼーションがコード分解的にならざるを得なくなり、コードに基づく音階から外れた音は使用できないなどの制限が増してきました。そこでコード進行を主体とせずに、モードに基づくスケールの進行を主体とし、インプロヴィゼーションによるソロ・プレイは一気に自由度を増したのです。

本作「KIND OF BLUE(カインド・オブ・ブルー)」では、トランペットのマイルス・デイヴィス、テナー・サックスのジョン・コルトレーン、アルト・サックスのキャノンボール・アダレイ、ピアノのビル・エヴァンス(2曲目「FREDDIE FREELOADER」のみウィントン・ケリー)、ベースのポール・チェンバース、ドラムスのジミー・コブの6人編成となっております。その中でもマイルス・デイヴィスはモード・ジャズ確立のために、ビル・エヴァンスを非常に必要としており、マイルス・デイヴィスの要望によってこのセッションに参加したらしいです。

1曲目の「SO WHAT」はモードというものが感覚的にお分かりいただけるナンバーで、16小節で1つのスケール、次が8小節の別のスケール、次がまた8小節の別のスケール、そして最初のスケールに戻り8小節という構成になっております。また、モードの特徴でもありアルバムを通していえることなのですが、旋律的にも和声的にも非常に不安定な状態が持続され、主音への回帰が意図的に避けられているのがわかります。いつまで経っても楽曲に終焉を迎える雰囲気はなく、そこがコード進行主体の音楽との劇的な差でもあります。

名盤といわれるだけあって、普段モダン・ジャズはあまり聴かない私でも、落ち着きのある夜にはついつい聴きたくなってしまい、また聴いているととても心地がよくなります。小難しい理屈は抜きにしても、楽しめるというか落ち着けるアルバムであり、夜聴くのであればお勧めは3曲目の「BLUE IN GREEN」(マイルス・デイヴィス作曲となっているが実際はビル・エヴァンスの作品らしいです)や5曲目の「FLAMENCO SKETCHES」などの静かめのナンバーですが、全曲通して聴いていただくのが結局のところ一番のお勧めです。

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